車を購入するときの見積もりで税金や諸費用のなかに「自賠責保険料」という項目があった。お店の人には必ず入る保険だと言われたけど本当だろうか。
入るとしても、テレビCMで「自動車保険は保険会社を変えると保険料が安くなる」と言っていたので、できれば安い会社を選びたい。でも、そんなことができるのかな・・・
という疑問に答えます。
もくじ
自賠責保険に入らないと法律で処罰の対象になります
自賠責保険は、強制保険とも言われる通りすべての車やバイクに対して加入が義務付けられています。例外はなく、加入しないとその車やバイクを運転できません。また、法律で処罰の対象にもなります。
というわけで必ず入らなければならない保険であるのは間違いありません!
理由は次の通りですが、長いので読み飛ばしていただいて構いません。
法律で決められています
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法(*1)という法律に基づいて運用されています。自動車損害賠償保障法は、交通事故で亡くなったりケガをしたりした被害者を保護する目的で制定されたものです。
例えば、交通事故が発生した場合、加害者は被害者に弁償する必要があります。しかし、加害者に賠償金の支払い能力がなければ、被害者がいくら賠償を求めても賠償金を受け取ることすらできません。
そのような最悪の事態を防ぐために、加害者が加入している自賠責保険から保険金が支払われる仕組みを定めているのがこの法律です。自賠責保険への加入が義務付けられているのはそのためなんですね。
厳しい罰則があります
加入を義務付けるために、自動車損害賠償保障法では、自賠責保険に入っていない車を運転してはいけないと定めています。(第三章第五条)
そのため、車検を受けるときに、次回の車検(新車購入時は3年後、それ以外は2年後)時まで有効な自賠責保険に入っていなければ、車検を通せないことになっています。
万が一、加入せずに運転していることがわかると、以下のような処罰の対象になります。
・違反点数6点
・30日間の免許停止処分
自賠責保険に入らないだけで、これだけの処分を受ける可能性があることを頭の片隅にでもおいていただければと思います。
ちなみに、自賠責保険証明書を車に置いていない場合も、見つかると罰金30万円以下の処分を受けます・・・。
ただし、通常は自賠責保険に入り損ねるようなことはまず起こりません。
車購入時や車検時に必要な費用に保険料は含まれているので、通常の手続きをすれば意識しなくても加入しています。
*1:自動車損害賠償保障法へのリンク(e-Gov法令検索)はこちら:
発行は昭和30年(1955年)と大変古くからある法律です。改定を何度も重ねて最新の改正は平成29年6月です。
自賠責保険の補償範囲
自動車損害賠償保障法に基づいて作られた自賠責保険では、補償される対象は交通事故の被害者だけに限定されています。
被害者のケガや死亡が対象で車や物は補償の対象外
補償の対象は被害者のケガ、死亡に限定されます。被害者の場合でも、車の損害については自賠責保険では補償を受けられません。
例えば、暴走車に衝突されてケガをすると、ケガの治療費は補償されますが、車の修理費は補償されません。また、自分が加害者になった場合には、自分の死亡やケガについては補償を受けられません。
自賠責保険で支払われる賠償金の限度額は、交通事故の被害にあわれた方1名あたり以下のとおり決められています。
- 死亡による損害 最高3,000万円
- 葬儀費
通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用(墓地、香典返しなどは除きます) - 逸失利益
被害者が死亡しなければ将来得られたはずの収入から、本人の生活費を控除した金額 - 慰謝料
被害者本人や遺族に対する慰謝料
- 葬儀費
- 後遺障害による損害 最高4,000万円
- 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害が残った場合は
・常時介護が必要なとき(第1級)は、4,000万円
・随時介護が必要なとき(第2級)は、3,000万円 - 上記1以外の後遺障害については、その程度を示す等級によって
・第1級 3,000万円~ 第14級 75万円
- 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害が残った場合は
- 傷害による損害 最高120万円
- 治療関係費
治療費、看護料、通院のための交通費、義肢等の費用、診断書等の費用など - 文書料
交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料 - 休業損害
事故の傷害で発生した収入の減少(有給休暇の使用や、家事従事者を含む) - 慰謝料
交通事故による精神的・肉体的な苦痛など
- 治療関係費
自賠責保険と自動車保険の違い
CMで耳にする「自動車保険」と自賠責保険は、どちらも車に対する保険ですが、補償内容や対象が異なります。
自賠責保険の不足分を補うのが自動車保険
自動車保険は、加入は任意であり、補償範囲は人以外に車やガードレールなどの「物」や自賠責保険では補償されない費用まで含まれます。自賠責保険と自動車保険の違いは下図のようになっています。
こうして比較すると、自賠責保険の補償範囲は限られていて、不足する分は自動車保険でカバーされることがわかります。また、被害者への補償については重複していますが、自賠責保険の支払限度額を超える賠償金が必要になった場合も自動車保険でカバーできるようになっています。
自賠責保険の保険料はどこで入っても同じ
自賠責保険の保険料は、実は保険会社を変えても安くなりません。補償額と補償範囲は法令で定められているからです。
自賠責保険料の算出方法
自賠責保険の場合、損害保険料率算出機構という団体が算出する基準料率に基づいて保険料が決められています。この機構には損害保険各社が会員として参加していて、すべての会員会社が機構が算出した基準料率を使って保険料を決めています。
本来は、保険会社は民間企業であり、それぞれの会社が利益率を設定して独自の保険料を決めるものです。しかし、自賠責保険に関しては公共性が高い保険であることから、保険料率もできる限り低くするように法令で規定されています。(ノーロス・ノープロフィットの原則)
そのため、自賠責保険の保険料はどの会社も基準料率に従って一律に定められています。
ちなみに、基準料率は毎年見直しされることになっています。
2019年度(平成31年)自賠責保険料
2019年度の自賠責保険料は昨年と同額に据え置かれました。抜粋した保険料を以下にまとめました。
この金額は、2019年4月1日から2020年3月31日まで有効です。
■離島以外の地域(沖縄県を除く)
車両種類 | 37か月 | 36か月 | 25か月 | 24か月 | 13か月 | 12か月 |
---|---|---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 (3,5,7ナンバー) | 36,780円 | 35,950円 | 26,680円 | 25,830円 | 16,380円 | 15,520円 |
小型貨物自動車 (自家用、4ナンバー) | – | – | 30,460円 | 29,470円 | 18,360円 | 17,350円 |
軽自動車 | 35,610円 | 34,820円 | 25,880円 | 25,070円 | 15,960円 | 15,130円 |
小型二輪自動車 | 14,950円 | 14,690円 | 11,780円 | 11,520円 | 8,560円 | 8,290円 |
原動機付自転車 | – | 12,340円 | – | 9,950円 | – | 7,500円 |
■離島地域(沖縄県を除く)
車両種類 | 37か月 | 36か月 | 25か月 | 24か月 | 13か月 | 12か月 |
---|---|---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 (3,5,7ナンバー) | 10,730円 | 10,580円 | 8,910円 | 8,750円 | 7,050円 | 6,890円 |
小型貨物自動車 (自家用、4ナンバー) | – | – | 11,950円 | 11,680円 | 8,640円 | 8,370円 |
軽自動車 | 9,490円 | 9,370円 | 8,060円 | 7,940円 | 6,600円 | 6,480円 |
小型二輪自動車 | 8,060円 | 7,980円 | 7,080円 | 7,000円 | 6,090円 | 6,010円 |
原動機付自転車 | – | 5,410円 | – | 5,280円 | – | 5,150円 |
■沖縄県(離島地域を除く)
車両種類 | 37か月 | 36か月 | 25か月 | 24か月 | 13か月 | 12か月 |
---|---|---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 (3,5,7ナンバー) | 16,510円 | 16,210円 | 12,850円 | 12,540円 | 9,120円 | 8,810円 |
小型貨物自動車 (自家用、4ナンバー) | – | – | 14,670円 | 14,290円 | 10,070円 | 9,690円 |
軽自動車 | 16,510円 | 16,210円 | 12,850円 | 12,540円 | 9,120円 | 8,810円 |
小型二輪自動車 | 5,470円 | 5,460円 | 5,320円 | 5,310円 | 5,160円 | 5,150円 |
原動機付自転車 | – | 5,410円 | – | 5,280円 | – | 5,150円 |
■沖縄県の離島地域
車両種類 | 37か月 | 36か月 | 25か月 | 24か月 | 13か月 | 12か月 |
---|---|---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 (3,5,7ナンバー) | 10,730円 | 10,580円 | 8,910円 | 8,750円 | 7,050円 | 6,890円 |
小型貨物自動車 (自家用、4ナンバー) | – | – | 11,920円 | 11,650円 | 8,630円 | 8,350円 |
軽自動車 | 6,610円 | 6,570円 | 6,100円 | 6,060円 | 5,570円 | 5,530円 |
小型二輪自動車 | 5,470円 | 5,460円 | 5,320円 | 5,310円 | 5,160円 | 5,150円 |
原動機付自転車 | – | 5,410円 | – | 5,280円 | – | 5,150円 |
より詳しく1カ月単位の保険料を確認したい方はこちらをご覧ください。
↓
国土交通省 自賠責保険ポータルサイト
主な車種・期間の保険料(共済掛金)
25カ月や37カ月という契約期間は何のため?
上の表をご覧いただいた方の中に、25カ月、37カ月という契約期間があることに違和感を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
普通に考えれば、新車で購入すれば次の車検は3年後、その後の更新間隔は2年なので、24カ月と36カ月があればいいのでは?と思うのですが、そうはいかない理由があります。
実は自賠責保険と車検の有効期間満了日の期限は以下のようになっています。
・車検:満了日当日の24時(夜)
自賠責保険に入っていないと車検が通らないことは先に書きましたが、新車購入時には、自賠責保険の開始日と車検の有効期間の開始日は同じ日になります。とすると、満了日が同じでも、自賠責保険は12時で有効期間が切れてしまうため、残りの12時間は無保険状態になってしまいます。
これを防ぐために、新車購入時は36+1カ月=37カ月分の自賠責保険に加入することになっています。
上記の理屈なら、プラスの保険料は1日分でもいいはずなのですが、自賠責は月単位の契約しかできないためこのような運用になっています。
また、「車検2年付き」と記載された中古車を購入するときも、同じ問題が発生する可能性があります。
「車検2年付き」の車は、購入時点では車検が切れていて、そのままでは公道を走行できません。したがって、販売者は購入されることが決まってから車検取得の手続きを始めます。
その場合は、新車を購入するときと同じ理屈で、車検合格日(つまり有効期間開始日)=自賠責保険開始日となりますので、満了日も同じ日になり、12時間の無保険状態が発生・・・。ということになるため、24カ月ではなく、25カ月分の自賠責保険料を納める必要があります。
いずれにせよ、この12時間の違いのために、プラス1カ月の契約期間が存在しています。
個人的には「だったら、自賠責の有効期間を車検と同じく24時にしてよ!」と思うのですが、これは今後も変わらないと思います。誰でもわかる話が長年放置されているということは、きっと何かの力が働いているとしか思えません。
「ノーロス・ノープロフィットの原則」というのなら、たった12時間の差異のために1カ月分の保険料を余計に納めなければならないこの仕組みも変えていただきたいと思うのですが、業界関係者の皆様いかがでしょうか・・・。
まとめ
- 自賠責保険は法律で定められた、すべての車とバイクに加入が義務付けられている保険です。
- 自賠責保険は事故被害者のケガや死亡に対して一定の限度額まで補償されます。より広い補償を得るには自動車保険(任意保険)への加入が必要です。
- 自賠責保険料は毎年改定されますが、保険料はどの保険会社でも変わりません。