自動車保険の保険料を安くしたいのに、補償を手厚くしようとするとなかなか安くならない。でも、今までは子供にも運転させていたけど、もうすぐ独立して家を出るから、帰省したときくらいしかこの車を運転することもなくなるから、運転者を見直して保険料を安くすることはできないかな。
という、家族だけが運転する車をお持ちの方のこのような疑問にお答えします。
もくじ
運転者限定特約とは
運転者限定特約とは、補償の対象者を限定することで保険料を抑えることができる特約です。
この特約をつけると、補償範囲の対象になっている人が運転中に起こした事故の損害に限り、保険金が支払われます。
保険料が安くなるのは事故のリスクが低くなるため
特約をつけない場合は、誰が運転してもよいという前提の契約になります。その前提で保険料が設定されるため、保険料はもっとも高くなります。
しかし、特約をつけて車の所有者(主に車を使用する人)やその家族に保険の対象範囲を限定すれば、車の使用頻度や走行距離の想定も少なくなるため、事故が発生するリスクも低くなると考えられます。
運転者を限定すると保険料を安く設定できるようになるのはこのような理由があります。
自動車保険における家族の定義に気をつけよう
運転者限定特約による限定範囲は、これまでおおむね「本人限定」「本人・配偶者限定」「家族限定」の3つにわかれていました。
このうち「本人限定」と「本人・配偶者限定」は対象が一目でわかりますが、「家族限定」の場合の「家族」はどのように定義されているのでしょうか。
ここでの「家族」は以下の通り定義されています。
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者またはその配偶者の同居の親族(★)
★親族とは、配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族が含まれます。
・記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
別居とは、同居していないという意味で、住民票の記載内容とは関係なく実際の居住状況から判断されます。また、未婚とは婚姻歴のないことを指します。一度でも結婚するとその後離婚しても「未婚」扱いにはなりませんのでご注意ください。
というのがこれまでの運転者限定特約の説明でした。ところが、2019年1月以降、一部の保険会社において限定範囲の見直しが行われています。
例えば、アクサダイレクトは保険始期日が2019年1月1日以降、ソニー損保は2019年4月1日以降の契約については「本人・配偶者限定」しか選択できないことになりました。
今後他社が追随するかは不明ですが、他社から保険を切り替える場合などこれまでと条件が変わることも予想されますのでご注意ください。
年齢条件の限定条件は家族でも対象外になる場合がある
自動車保険では、運転者を家族に限定する以外にも、運転者の年齢を限定することもできます。(運転者の年齢条件に関する特約)
保険会社によっても若干異なりますが「制限なし」「21歳以上補償」「26歳以上補償」「30歳以上補償」「35歳以上補償」などの設定があります。運転者の年齢が上がると事故率が下がるという理由で、制限年齢が高いほど保険料が安く設定されています。
例外はセゾン自動車火災保険の「おとなの自動車保険」です。おとなの自動車保険では、被保険者の年齢1歳刻みで保険料が設定されるため、運転者に対する年齢条件はありません。
ただし、年齢条件が適用されるのは「記名被保険者と配偶者、同居の親族」です。被保険者と配偶者はよいとしても「同居の親族」については注意が必要です。
親族の定義は上記★のとおりですが、既婚か未婚かは問われないため、既婚でも同居していれば対象になります。
一方、家族限定の場合、「家族」の範囲内である「別居の未婚の子」については、別居しているという理由で年齢条件の制限を受けません。
したがって、大学進学等で別居している未婚の20歳の子供が実家に帰ってきて親の車を運転する、というケースでは、たとえ「30歳以上補償」の特約をつけていても補償の対象に含まれます。
家族限定特約の見直し例
運転者を家族限定にすると、ライフステージのなかで家族構成が変わるたびに見直しが必要になってきます。
ここでは以下のケースについて、具体例を挙げて検討します。
なお、運転者限定特約は「本人限定」「本人・配偶者限定」「家族限定」、年齢条件は「21歳以上補償」「26歳以上補償」「30歳以上補償」のいずれかを設定できる保険会社の例としてご覧ください。
家族が免許を取ったとき
■ケース1
運転者限定特約:本人・配偶者限定 年齢条件:30歳以上補償
同居している子供(22歳)が免許を取りました。自分の保険の対象にするにはどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:21歳以上補償
お子様は「同居の親族」に該当するため、運転者限定、年齢条件ともに補償対象に含まれます。
したがって、運転者限定を「家族」、年齢条件を「21歳以上補償」にそれぞれ変更すればOKです。
■ケース2
運転者限定特約:本人限定 年齢条件:30歳以上補償
別居の大学生の子供(20歳)が免許を取り、帰省したら私の車を運転したいと言っています。子供を補償の対象にするにはどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:30歳以上補償(変更なし)
お子様は「別居の未婚の子」に該当するため、運転者限定だけが適用対象となります。
その場合は、運転者限定を「家族」に変更する必要がありますが、年齢条件の対象外であるため年齢条件は変更不要です。
家族が結婚・離婚したとき
■ケース1
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:26歳以上補償
同居の未婚の子供(27歳)が結婚して家を出ることになりました。実家に帰省したときだけ、自分の車を運転できるよう、補償の対象にするにはどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:限定なし 年齢条件:30歳以上補償
お子様は運転者限定特約で定義された「家族」のいずれにも該当しないため、運転者限定、年齢条件のどちらも適用対象外となります。
したがって、運転者限定は「限定なし」に変更しなければなりませんが、年齢条件は適用対象外のため、「30歳以上補償」に変更することができます。
■ケース2
運転者限定特約:本人限定 年齢条件:30歳以上補償
別居していた子供(28歳)が離婚して家に戻ってきました。子供を補償の対象にして私の車を運転させたいのですがどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:26歳以上補償
お子様は「同居の親族」に該当するため、運転者限定、年齢条件ともに適用対象となります。
したがって、運転者限定を「家族限定」に、年齢条件を「26歳以上補償」に変更すれば、補償の対象となります。
家族が同居・別居したとき
■ケース1
運転者限定特約:本人・配偶者限定 年齢条件:30歳以上補償
大学進学のため別居していた子供(23歳)がUターン就職で家に戻ってきました。私たち夫婦(50台)だけでなく子供も補償の対象にするにはどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:21歳以上補償
お子様は、「同居の親族」に該当するため、運転者限定、年齢条件ともに適用対象となります。
したがって、運転者限定は「家族限定」、年齢条件は「21歳以上補償」への変更が必要です。
■ケース2
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:21歳以上補償
私たち夫婦(50代)と同居の息子夫婦(息子25歳、妻24歳)が私の車を運転しています。息子夫婦が近くに家を建てて別居することになりましたが、車はときどき運転する予定です。主な運転者は夫のままですが、引き続き子供を補償の対象とするにはどうすればいいでしょうか?
運転者限定特約:限定なし 年齢条件:30歳以上補償
息子さん夫婦はこれまでは「同居の親族」でしたが、別居を開始した時点で「家族」の定義のいずれにも該当せず、運転者限定、年齢条件の適用対象外となります。
したがって、運転者限定は限定なしに変更しなければ補償は受けられません。逆に年齢条件は対象外ですので、「30歳以上補償」に変更しても補償の対象となります。
家族以外の他人が運転するとき
■ケース1
運転者限定特約:家族限定 年齢条件:30歳以上補償
姪っ子(20歳)が遊びに来て、免許を取ったので私(48歳)の車を運転させてほしいと言います。そのまま運転させた場合、補償の対象になるでしょうか。
運転者限定特約:限定なし 年齢条件:30歳以上補償
甥、姪は自動車保険での「家族」の定義には該当しないため、運転者限定、年齢条件のいずれも適用対象外となります。したがって、運転者限定を「なし」に変更しなければ補償を受けられません。
逆に年齢条件は変更不要です。
■ケース2
運転者限定特約:限定なし 年齢条件:21歳以上補償
友達と車で旅行をすることになり、私(21歳)の車を友達と交代で運転することになりました。友達には、まだ20歳の人もいるのですが、補償の対象になるでしょうか。
運転者限定特約:限定なし 年齢条件:21歳以上補償
友達は家族ではありませんので、運転者限定、年齢条件のいずれも適用対象外となります。
したがって、運転者限定、年齢条件はそのままでも補償の対象となります。
まとめ
- 運転者限定特約をつけると保険料は安くなります。
- 年齢条件は主に運転する人の「配偶者を含む同居の親族」だけが対象です。
- 運転者限定特約の「家族」の定義は一般的な認識と少し違うかもしれないので注意してください。