10月1日から神奈川県全域を始め、いくつかの自治体で自転車保険の加入が義務化されました。
ここ数年、自転車保険への加入を義務付ける自治体が増えていますが何故でしょうか。

もし、加入しないと何か罰を受けるのでしょうか。
など、自転車保険の義務化に関する疑問にお答えします。
もくじ
自転車保険の加入義務化とは?
義務化が進んでいる背景
近年、自動車に限らず、歩きスマホ、自転車スマホなどながら運転による事故が相次いでいます。
特に自転車による重大事故が増えており、なかには数千万円もの賠償金が請求されるケースもあります。
裁判所・年 | 事故の概要 | 賠償金額 |
---|---|---|
神戸地裁 平成25年7月 | 坂道を下ってきた小学5年の少年の自転車が歩行中の62歳女性と衝突し、歩行者の女性が意識不明となった。 | 9,520 万円 |
東京地裁 平成20年6月 | 自転車運転中の男子高校生が車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた 24 歳会社員男性と衝突し、会社員は言語機能の喪失等重大な障害が残った。 | 9,266 万円 |
東京地裁 平成26年1月 | 信号無視した会社員の男性 46 歳の自転車が横断歩道を渡っていた 75 歳の女性と衝突し、歩行者の女性が死亡した。 | 4,746 万円 |
出典:兵庫県ホームページ
その場合、被害者には確実に賠償金が払われるようにするため、加害者には経済的な負担が軽減されるようするために、自転車保険への加入を促す自治体が増えています。
自動車保険加入を義務化している自治体が増えているのは、加害者・被害者のどちらの立場になっても住民を守るという自治体の意思を感じます。
加入しないとどうなる?罰則は?





下のフローチャートを見て、ご自身が自転車保険に加入する必要があるかどうかをご確認ください。
(出典:埼玉県ホームページ:自転車損害保険等の加入義務化について)
自転車保険が義務化された地域
全国で初めて自転車保険の加入が義務化されたのは2015年10月、兵庫県でした。それ以降も加入を義務付ける自治体は着々と増えています。
先に書いた通り、10月1日からは神奈川県でも自転車保険加入が義務化されました。
2020年には東京でも義務化される可能性があると報じられています。
2019年10月1日現在、加入が義務化または努力義務化されている主な地域は以下のとおりです。
- 義務化地域
宮城県仙台市、埼玉県、神奈川県、長野県、静岡県、名古屋市、金沢市、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鹿児島県 - 努力義務化地域
北海道、群馬県、千葉県、東京都、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県
どんな保険に入ればいいの?
自転車保険加入の義務化と言っても、実際は「自転車事故による損害賠償を補償できる保険への加入を義務化する」のが本当の意味です。
つまり「自転車保険」という保険でなくても、自転車利用中の事故によって誰かを死傷させてしまったときの損害を補償できる何らかの保険に加入していればいいわけです。
自転車事故による損害を補償できる「自転車損害賠償責任保険」の種類には以下のようなものがあります。
- 自動車保険、火災保険、傷害保険などに付帯して自転車事故を補償できる特約
- 個人賠償責任保険
- 自転車保険
- クレジットカード会員が自動加入する保険で自転車事故を補償できるもの
- 全労済、JA(農協)共済、コープ共済、都道府県民共済 など
- 会社等の団体保険、PTAの保険 など
自動車保険で条例を満たす補償をカバーする方法は?
当サイトは自動車保険に関するサイトなので、以下は自動車保険の契約で自転車保険義務化に対応するための方法をご紹介します。
自転車事故による損害賠償を補償できる特約は?
ご自身が自転車に乗っているときに起こした事故による損害賠償を補償する特約は「個人賠償責任」または「日常生活賠償」という名前の特約です。
どちらも自動車の運転中とは関係なく、日常生活で自分やご家族が起こした事故によって損害賠償の責任が発生したときに保険金が支払われる特約です。
自転車で起こした事故も日常生活で発生する可能性がある事故に含まれるので、事故相手への補償はこの特約でカバーできます。
また、示談交渉サービスがついているので事故を起こした場合の相手との交渉は保険会社が対応してくれます。
主な自動車保険会社の対応状況を表にまとめました。
保険会社 | 特約あり | 賠償限度額 | |
---|---|---|---|
代理店型 | 楽天損保 | ○ | 無制限 |
AIG損保 | ○ | 無制限 | |
東京海上日動 | ○ | 無制限 | |
損保ジャパン日本興亜 | ○ | 無制限 | |
三井住友海上 | ○ | 無制限 | |
日新火災 | ○ | 2億円 | |
あいおいニッセイ同和損保 | ○ | 無制限 | |
共栄火災 | ○ | 2億円 | |
チャブ損保(旧エース損保) | ○ | 1億円 | |
ダイレクト型 (ネット型) | ソニー損保 | ○ | 3億円 |
セゾン自動車火災保険 (おとなの自動車保険) | ○ | 無制限 | |
セコム損保 | ○ | 3億円 | |
イーデザイン損保 | ○ | 1億円 | |
SBI損保 | ○ | 1億円 | |
チューリッヒ(ネット) | ○ | 1億円(※) | |
チューリッヒ(スーパー) | ○ | 1億円(※) | |
三井ダイレクト損保 | ○ | 無制限 | |
アクサダイレクト | ○ | 3000万円 |
補償の限度額に差はありますが、すべての保険会社において、特約をつけることで自転車保険の義務化に対応できるようになりました。
補償額は、代理店型の損保会社では多くが限度額が無制限なのに対し、ダイレクト型の損保会社では、おとなの自動車損保と三井ダイレクト損保だけが無制限になっています。
アクサダイレクトの3000万円は、補償としては少々物足りない感じがします。
自転車事故専用の特約もある
このほかに、自転車事故で損害賠償が発生したときの補償に限定した特約を選べる保険会社もあります。
三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保では、日常生活賠償特約か自転車賠償特約のどちらかを選んでセットできます。
自転車賠償特約を選ぶと、補償範囲が自転車事故による賠償責任に限定されるため多少保険料を抑えることができます。
また、SBI損保では、損害賠償と傷害補償がセットになった「自転車事故補償特約」が選べます。
損害賠償だけなら個人賠償責任特約でも補償されるため、2つともつける場合は補償内容が一部重複します。
そのため、保険料が割高にならないよう、両方をつける場合は個人賠償責任特約の保険料が安くなります。
2020/7/24追記
昨年10月時点で唯一非対応だった三井ダイレクト損保は、2020年1月に自転車賠償特約を新設して自転車保険加入義務化に対応できるようになりました。
自転車事故で自分やご家族がケガをした場合の補償をカバーするには?
自転車保険の義務化に対応するだけでしたら、ここまでで話は終わりです。


というわけで、自転車事故による自分や家族のケガを補償する特約の有無をまとめました。
保険会社 | 特約の種類 | |
---|---|---|
代理店型 | 楽天損保 | ファミリー自転車傷害特約 |
AIG損保 | 人身傷害でカバー | |
東京海上日動 | 自転車傷害補償特約 | |
損保ジャパン日本興亜 | × | |
三井住友海上 | 交通乗用具事故特約 | |
日新火災 | 交通乗用具事故特約 | |
あいおいニッセイ同和損保 | 交通事故特約 | |
共栄火災 | 自転車傷害補償特約 | |
チャブ損保(旧エース損保) | × | |
ダイレクト型 | ソニー損保 | × |
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | 自転車傷害特約 | |
セコム損保 | × | |
イーデザイン損保 | × | |
SBI損保 | 自転車事故補償特約 | |
チューリッヒ(ネット) | × | |
チューリッヒ(スーパー) | 傷害特約 | |
三井ダイレクト損保 | × | |
アクサダイレクト | × |
特約なしの人身傷害でカバーしているのは全損保のなかでも、AIG損保のみです。
また、代理店型では損保ジャパン日本興亜とチャブ損保、ダイレクト型では半数以上の会社で特約がありません。
これはすべてを自動車保険で補償する必要はないと割り切るか、自転車保険もしっかり補償してアピールポイントにするか、会社ごとの考え方によるものと思われます。
自転車保険と自動車保険、どっちがお得?


一例として、au損保の自転車保険「Bycle」の一番安いコース(ブロンズコース)とおとなの自動車保険の自転車事故に関する特約について、補償範囲やサービスと保険料を比較してみます。保険料は一時払いで計算しています。
補償内容等 | Bycle | おとな | 備考 |
---|---|---|---|
保険料 | 8,090円 | 3,720円 | |
死亡 | 500万円 | 500万円 | |
後遺障害 | 210~500万円 | 20~500万円 | 傷害の程度により変化 |
ヘルメット着用中死亡 | 100万円 | ― | |
入院一時金 | なし | 10万円 | auは3日以上 おとなは5日以上 |
入院保険金日額 | 8,000円 | 5,000円 | |
手術保険金 | 4万円 または8万円 | なし | |
通院保険金日額 | なし | なし | |
個人賠償責任 | 2億円 | 無制限 | |
サービス | 自転車 ロードサービス 付き |
- 家族構成:夫、妻、子供(中学生、小学生)の4人家族
- おとなの自動車保険の保険料内訳は
個人賠償責任特約:1,620円
自転車傷害特約:2,100円
合計 3,720円 - Bycleはブロンズコース、家族タイプの保険料と保険金。保険金額は自転車事故の場合で、日常生活での事故の場合は表の半額(賠償金は同額)
おとなの自動車保険では、通院時の補償はなく入院時の一日当たりの保険金も安いですが、その分保険料は抑えられています。
「Bycle」は上の例のブロンズコースの他に、シルバーコース、ゴールドコースがあります。
シルバーコース、ゴールドコースでは、入院一時金も支給され保険金も高くなります。
また、Bycleでは、自宅から1km以上50km以内の場所で自転車が自走不能になったときに無料で搬送してくれるロードサービスも付いてきます。
自転車専用の保険なので補償は充実していますが、最上級のゴールドコースの保険料は22,250円と決して安くはない金額です。
また、入院保障などは医療保険に加入している方の場合、内容が重複する可能性があります。
したがって、自動車保険と自転車保険を比較してどちらが得になるかは、人によって変わってきます。
保険料を節約するには、ご家庭で加入しているすべての保険を見直して保険内容の重複をなくすことが重要です。
なかなか手間がかかることですが、自転車保険の義務化をきっかけに保険内容を一度整理してみることをおすすめします。
自分では難しいというかたは、無料の保険相談サービスを利用するのもおすすめです。
まとめ
- 自転車保険加入を義務化する自治体が増えているのは、自転車事故の件数が相対的に増えているからです。
- 必ずしも自転車保険に加入する必要はなく「個人賠償責任」を補償する保険であれば義務化には対応できます。
- 自動車保険では、比較的安い保険料で自転車保険の義務化に対応できます。
自動車保険の保険料を安くしたいと思ったら、複数の保険会社から見積を取って比較するのが一番です。
でも、複数の会社に何回も依頼するのは大変ですし、そもそもどの保険会社がよいかもわからないこともあると思います。
そんなときに便利なのが、「自動車保険一括見積もりサイト」です。
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