ネット自動車保険が日本に登場してから20年が過ぎたと聞いたけれど、自分のまわりでは会社の団体扱いの保険に入っている人ばかりで、わざわざネット自動車保険に入ろうとする人はいないようだ。テレビCMもたくさん見るのにどうしてだろう。
保険料は安いのにそれ以上に何かデメリットがあるのだろうか。
という、ネット自動車保険について迷われている方の、そのような疑問にお答えします。
もくじ
ネット自動車保険とは
ネット自動車保険はインターネットだけで見積・申し込みができます。店舗に足を運ぶ必要もなく、いつでもパソコンやスマホで手続きができて大変便利です。
ネット自動車保険の概要
ネット自動車保険は、もともと、保険会社と車の運転者が対面することなく直接契約する保険なので、「ダイレクト型」「通販型」とも呼ばれていました。
そのなかで、多くの会社が郵送でも電話でもなく、インターネットで契約が完了できるようになっているため、今ではネット自動車保険という言葉が広まっています。
ただし、契約額ベースでは、ネット自動車保険の割合は全体の1割にも満たないほどにとどまっていて、テレビCMでよく見る割には思っているほど契約者は多くないと感じる方が多いかもしれません。
代理店型自動車保険との違い
従来の代理店型自動車保険との違いを一言でいえば「保険会社と契約者の間に代理店やディーラーが入るかどうか」という点です。
代理店型の場合、販売やお客様への窓口対応は代理店やディーラーなど外部に委託しています。
代理店を通さず直接契約するネット型では、この手数料部分が費用としてかからない分、保険料を安く設定できます。
ネット自動車保険のメリット
ネット型の自動車保険を代理店型の自動車保険と比べたときに、考えられるメリットは主に2つあります。
保険料が安い
「保険」は目に見える形はありませんが一つの商品です。保険の販売にはさまざまなコストがかかります。
人件費やオフィスの賃料などの固定費、CMやパンフレットなどの広告費や様々な営業経費、保険金支払用の資金など多くの費用が必要です。
代理店型では、保険会社がディーラーや代理店に各種手続きをしてもらう代わりに、販売手数料を払う必要があります。そして、その手数料は保険料に上乗せされてユーザーが負担することになります。
一方、ネット自動車保険では、代理店への手数料が発生しないようにすべての手続きをユーザーと直接やり取りすることで完結できるようになっているため、営業コストから手数料分を削減することで保険料を安く設定できるようになっています。
いつでもどこでも手続きを完了できる
ネット自動車保険では、ネットに接続したPCとスマホがあれば、店舗に行かずとも自宅で、自宅にいなくても外出先で、手続きを完了させることができます。
深夜早朝の一部の時間を除いて、基本的には24時間受付可能なので、自分の都合がよい時間に手続きができることは、日中忙しい方にとっては大きなメリットになるのではないでしょうか。
ネット自動車保険のデメリット
安くて便利なネット自動車保険ですが、デメリットもあります。
全部自分でやらなければならない
これはメリットの裏返しでもありますが、契約や事故対応など、すべての手続きを自分でしなければならない点はデメリットだと考える人が多いポイントだと思います。
申込から補償内容の検討、決定、さらに事故が起こったときの手続きまで、すべて自分から連絡したり操作したりして、自分の手で進める必要があります。
困ったときの相談相手がいない
代理店型の保険に加入した場合、事故発生時の連絡先は代理店の担当者になります。
保険の契約時に代理店担当者と契約手続きや補償内容に関する相談などでやり取りする間に信頼関係を築くことができれば、事故を起こしたときでも安心感があるはずです。
ネット型の場合は、事故を起こしてしまったら直接保険会社へ連絡する必要がありますし、事故が起こらない限り専任担当者はいません。
契約するときも、自分で情報を集めて判断・決断が必要です。
もしその点に不安がある方は、保険料が高いのは代理店担当者への相談料だと納得して代理店型の自動車保険を選ぶことをおすすめします。
事故対応は代理店型のほうがよいのか?
ネット型のデメリットとしてもうひとつ挙げられるのは、事故対応が不安という声です。
しかし、代理店型であっても「事故対応は直接保険会社と」という立場に立って、間には入らないという代理店もあるようです。
また、担当者の能力不足のために保険会社とうまくコミュニケーションできないこともあります。
その意味では、代理店型かネット型かはもはや問題ではなく、直接担当になる人の能力次第という部分があるのは否めません。
そして、民間の調査でも、事故対応に関する顧客満足度調査の上位にはネット自動車保険会社も入っており、全体の1位もネット自動車保険であるソニー損保です。
(JDパワー 2018年調査結果)
会社名 | ポイント | タイプ |
---|---|---|
ソニー損保 | 736 | ネット型 |
東京海上日動 | 723 | 代理店型 |
AIG損保 | 706 | 代理店型 |
損保ジャパン 日本興亜 | 697 | 代理店型 |
イーデザイン損保 | 694 | ネット型 |
セゾン自動車火災 | 694 | ネット型 |
三井住友海上 | 687 | 代理店型 |
チューリッヒ | 675 | ネット型 |
あいおいニッセイ 同和損保 | 673 | 代理店型 |
三井ダイレクト損保 | 662 | ネット型 |
アクサダイレクト | 660 | ネット型 |
SBI損保 | 646 | ネット型 |
2~4位は代理店型ですが、5位は同ポイントでイーデザイン損保とセゾン自動車火災が並んでいて、4位と5位の差もわずか3ポイントです。
この結果を見る限りでは、顧客視点で見ても「ネット型だからだめ」とは必ずしも言えない状況です。
ただし、ネット型の場合は、代理店の中間コストだけでなく、そのほかの経費に関しても可能な限りコストを削減しています。
例えば、事故が発生した時に事故を調査して適正な保険料を算出する「技術アジャスター」と呼ばれる専門家を自前で持っていなかったり、持っていても大都市にしかいなかったりということがあります。
過失割合の判断が難しい交通事故の場合、この「技術アジャスター」の技量が事故処理の対応に大きくかかわってきます。
そのため、自前の技術アジャスターを持たないネット型の場合は、事故が起きた地域によっては対応が遅くなる可能性もあります。
代理店型、ネット型のどちらを選んでもそれぞれメリットとデメリットがあります。
したがって、どちらを選ぶべきかを考えるためには、まず、交通事故のリスクに対して求める補償とご自身の運転頻度などを考慮したうえで、自分が何を重視して考えるかを決めることが必要です。
まとめ
- ネット自動車保険は代理店を通さず中間コストを削減することで安い保険料を実現しています。
- ネット型、代理店型のどちらを選んでもメリット・デメリットがあります。それぞれの特長を理解してどちらが自分に合っているかを考えて選ぶことをおすすめします。